家庭用ゲーム機 技術資料室

Console Hardware Archiveest. 2024

32/64bit世代(1994–1996) / ソニー・コンピュータエンタテインメント

PlayStationPlayStation

座標変換専用回路と動画伸張回路をCPUと同じパッケージに入れる。3Dとムービーを最初から前提に置いた設計だった。

ソニー PlayStation 本体(SCPH-5500)
PlayStation(ソニー・コンピュータエンタテインメント/1994年12月3日)
撮影:Evan-Amos / 出典:Wikimedia Commons / パブリックドメイン

基本情報

発売日1994年12月3日
発売元ソニー・コンピュータエンタテインメント
型番SCPH-1000
発売時価格39,800円
ソフト媒体CD-ROM(2倍速)
同時発色数1,677万色
出荷台数全世界 1億249万台

ソニー公表値。

システム構成

媒体 / MEDIA CD-ROM 2倍速 約640MB メモリーカード15ブロック CPU R3000A系 LSI 33.8688MHz GTE / MDEC を同一パッケージに統合 SYSTEM BUS 映像 / VIDEO GPU(描画専用) 256×224 〜 640×480 Zバッファなし メモリ / MEMORY メインRAM 2MB VRAM 1MB サウンドRAM 512KB 音源 / SOUND SPU ADPCM 24ch リバーブ内蔵 入出力 / I-O コントローラ端子×2 メモリーカード×2 拡張端子・シリアル端子 FIG. PlayStation — SYSTEM DIAGRAM

図1 PlayStation のシステム構成。当資料室で作成。

主要諸元

CPULSI(R3000A系 32bit RISC)33.8688MHz
内蔵コプロセッサGTE(幾何演算エンジン)/MDEC(動画伸張)
映像GPU(描画専用)/解像度 256×224 〜 640×480
発色数1,677万色
ポリゴン性能最大 36万ポリゴン/秒(テクスチャ・光源処理なし時)
音源SPU/ADPCM 24ch・リバーブ内蔵
メモリメインRAM 2MB/VRAM 1MB/サウンドRAM 512KB
媒体CD-ROM(2倍速)/メモリーカード(15ブロック)

GTEとMDEC

PlayStationのCPUパッケージには、R3000A系のコアのほかに2つの専用回路が同居している。GTE(Geometry Transformation Engine)と、MDEC(Motion DECoder)である。

GTEは3D座標の変換、透視投影、光源計算を担当する。ポリゴンを扱うために毎フレーム大量に発生する行列演算を、CPUの汎用命令ではなく専用回路で処理する。3Dを前提とした設計であることが、この構成から読み取れる。

MDECはJPEG系の静止画圧縮を高速に展開する回路で、これを連続再生することで動画になる。CD-ROMの容量とあわせて、ムービーシーンを多用したソフトが一般化する土台となった。

Zバッファを持たないこと

PlayStationのGPUは深度バッファ(Zバッファ)を持たない。ポリゴンの前後関係は、描画順を並べ替えることで表現する。ソフト側でポリゴンを奥から手前へ並べ、順に描いていく方式である。

この方式には限界がある。長いポリゴンと短いポリゴンが交差する場面では、どちらを先に描いても正しくならない。ポリゴンが互いに貫通して見える現象はここに由来する。

もうひとつ、テクスチャのマッピングがアフィン変換で行われる。奥行きに応じた補正(パースペクティブコレクション)がないため、大きな面に貼ったテクスチャが視点の移動にあわせて揺れる。床や壁の模様が波打つように見えるのはこのためで、PlayStation世代の映像を特徴づける現象になっている。

開発環境と参入条件

ハードウェアの設計と並んで語られるのが、ソフトメーカー向けの体制である。C言語ベースの開発ライブラリとPC上で動作する開発キットを早期に整え、参入時の初期費用を抑えた。

従来のROMカートリッジでは、ソフトメーカーが在庫リスクを負って大量のROMを事前生産する必要があった。CD-ROMは製造単価が安く、リードタイムも短い。追加生産の判断が現実的な期間で行えるようになったことは、中小規模の開発会社にとって参入障壁を大きく下げた。

全世界1億249万台という数字は、ハードウェア性能そのものよりも、この供給側の設計に帰されることが多い。

派生モデル・周辺機器

1995年
SCPH-3000/3500 ― 映像出力端子の整理、パラレル端子の変更
1997年11月
アナログコントローラ(DUALSHOCK)― 振動機能とアナログスティック2本
2000年7月
PS one(SCPH-100/15,000円)― 小型化・低価格化
2006年3月
本体出荷終了

参考にした資料

  • ソニー・インタラクティブエンタテインメント 累計実売台数資料
  • PlayStation 開発者向け技術資料(GTE/GPU 仕様)

画像出典

  • 「ソニー PlayStation 本体(SCPH-5500)」 撮影:Evan-Amos / 出典:Wikimedia Commons / ライセンス:パブリックドメイン

システム構成図および各種グラフは当資料室で作成したものです。

最終更新:2025-12-14